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104_尻別川
尻別川に生きる人々の営み / 尻別川の地形 / 松浦武四郎の尻別川探索 /
尻別川の地形
上流部(旧大滝村喜茂別町付近)
源流部から喜茂別の農村部付近までは、深い山間を流れ落ち込みが連続する、河川生態学で使われる分類方法(※)でいうAa型、いわゆる渓流の様相を呈しています。
※川地形の分類[可児籐吉1944(昭和19)年]河川の1つの蛇行の中に、多数の瀬と淵が交互に出現するものをA型、瀬と淵が1つずつしかないものをB型とし、さらに瀬から淵への流れ方に関し、滝のように落ち込むものをa型、波立っているタイプをb型、ほとんど波立たないタイプをc型に分類します。この2種類の特徴は関連しており、A型はa型と、B型はb型とc型にみられるので、両者を組み合わせてAa型・Bb型・Bc型という3種類を区分できます。
中流部(喜茂別町付近倶知安町市街地)
山間部を抜けたあたりから、Bb型の流れとなり、畑の広がる高原地帯を蛇行しながら数々の支流を集めて流れます。京極町付近では羊蹄山からの湧水も流れ込み少しずつ水量を増した流れは、倶知安町付近までくると川幅も広く蛇行し河岸段丘を発達させて流れます。洪積世に堆積したと考えられる真狩別層を観察すると、倶知安町付近では粘土層を含み厚さが10m、寒別付近では粘土層を含まずに厚さが20cm程度ということから、かつて倶知安には寒別付近を入口とした湖が存在した可能性もあります。その後、数回の地盤の隆起や海面の低下などにより、現在みられる地形が形作られてきました。
中流部(倶知安町ニセコ町)
一度は一般的な中流域の様相となる尻別川ですが、倶知安町の下流からその風景が一変します。再びAa型の様相となり、狭く深い谷あいを激しく流れ下ります。特に比羅夫からニセコ市街の上流付近までは、非常に険しい地形から川に近づくことも容易ではありません。倶知安町より上流で見られた広い玉砂利の川原はほとんどなく、大きな岩の間を流れていきます。比羅夫から蘭越町上流部までの間に6箇所の水力発電所が設けられるほどに大きな落差と豊富な水量は、尻別川の大きな特長のひとつです。下流部(蘭越町河口)
蘭越町市街地付近では、Bb型の流れとなり穏やかに流れ、名駒付近から下流はBc型となり、大河の様相を呈してきます。
尻別川の河畔林
河畔林とは川辺にある森林のことで、河川の生態系を考えたとき重要な役割を果たしています。尻別川の河畔にはタチヤナギ、エゾノカワヤナギ、ハルニレなどの樹木、エゾミソハギ、エゾアジサイ、ガマズミ、ヤマブキなどの草花が分布しているほか、水中にはバイカモも見られます。そしてハマハコベやオニスゲ等、着目すべき種も確認されています。その植生は洪水などにより地形とともに常に変化していきます。河畔林は河川改修工事などにより以前よりも減少してきていますが、尻別川の特に倶知安からニセコの区間は川原が非常に少なく切り立った河岸には川面ぎりぎりまで鬱蒼とした河畔林が茂っています。その地形と相俟って野趣あふれる独特の景観を作り出しています。
河畔林の役割には、日光遮断、落ち葉などの有機物供給、倒木・流木供給、細粒土砂補足、栄養塩除去、水生生物への生息場提供、陸生生物への生息場提供などが考えられます。河畔林から供給される落ち葉などは水生昆虫の餌となり、水生昆虫は魚類の餌となります。また、魚や川の周辺に生きる動物たちにとっての大切な生息場所を作る河畔林は、河川の生態系を支える非常に重要な存在であることがわかります。一方、河畔林は洪水時に流れを妨げ、流木が橋脚に負荷を与えるなどの問題を引き起こすため、治水対策として伐採されることがあります。尻別川では生態系や景観と、治水対策のバランスを考えてどのような管理の方法が適切なのかを考えていくため、しりべつリバーネットなどが中心となって住民参加のもとに検討が行われています。
尻別川に生息する水生生物
尻別川は約1,640平方kmという広大な流域面積をもつ大河で、全国一級河川の中で7回清流日本一に選ばれたこともあるほど良好な水質の川です。そこには幻の魚といわれるイトウをはじめとする多くの生き物たちが暮らしています。下流域ではヤツメうなぎが漁業の対象にもなっており、一時は年間100トンを超える漁獲高があったときもありました。かつては、まるで海底に揺れる昆布のように、たくさんのヤツメが泳いでいたといわれます。この大河は生物の生息場所としてだけでなく、多くの恵みも与えてくれます。
一般に豊かな環境では食物連鎖の頂点にたつ大型の生物が暮らしていくことができます。かつて尻別川には、巨大なイトウが数多く生息していたと言われています。尻別川のイトウはアイヌの人々にオビラメと呼ばれ、チライと呼ばれる他の河川に棲むイトウとは区別されていました。他の河川とは違う特徴を持つほどのイトウ個体群を養うことができるということは、それだけの包容力をもった自然環境がそこにはあったということでしょう。しかし現在では絶滅寸前となってしまったことを考えると、環境や生態系が大きく変化してきていることがうかがわれます。
尻別川で見られる主な魚類は、サケ、サクラマス、アメマス、アユ、カワヤツメ、ヤマメ、ウグイ、フクドジョウ、ハナカジカ、コイ、イトウ、オショロコマなどです。
その他にも、エゾサンショウウオなどの両生類、カワシンジュガイなどの底生動物も数多く見られます。尻別川にもブラウントラウト、ニジマスなどの移入種が生息しています。特にブラウントラウトは、在来種に影響を与える恐れがあり問題視されています。
サポート 日時: 2007年10月25日 09:07