国際化に伴う開発ラッシュと景観問題

ヒラフ地区のリゾート開発と景観問題

倶知安町のヒラフ地区は、これまで昭和30 年代から全日本級のスキー選手権大会や二度にわたる冬季スキー国体の開催によって、ニセコマウンテンリゾートグラン・ヒラフ(旧ニセコ国際ひらふスキー場)としてその名が知られ、宿泊施設など多くの観光施設も集積されてきました。“パウダースノー”は国際的にも評価が高く、またゲレンデから眺められる羊蹄山(蝦夷富士)の美しさは絶景で、世界中のスキーヤーがあこがれるスキーのメッカです。また、スキー場を除く周辺地区は、自然公園法の区域以外では特別の規制を敷いていないため、自由な行動様式による資本投下がこれまでになされ、建物が不規則に建築されてきた地区でもあります。そのなかにあっても、地域のコミュニケーションにより、これまで暗黙のルールで地域の秩序が保たれてきました。

ヒラフ地区は、パウダースノーで知られる雪質や地形のみならず、中低層のホテルやペンションの街並みがニセコアンヌプリの山並みに包み込まれるような景観もサンモリッツを髣髴(ほうふつ)とさせることから、“東洋のサンモリッツ”と称されてきました。地域には、このイメージを大切に育んでまちづくりをすすめてきた歴史があります。しかし、グランヒラフスキー場を利用するオーストラリア人スキーヤーが年々増える傾向を受けて、2004(平成16)年ごろから国内外の資本によるコンドミニアムなどの中高層建築の計画が急増するようになりました。地域の活性化にとって好ましいことであるとして地域側は基本的に歓迎しつつも、一方ではいくつかの問題も顕在化してきました。この地域は都市計画などの土地利用規制が無い場所であることから、敷地いっぱいに建物が建てられ屋根からの落雪や除雪を敷地内で処理できず、安全な道路通行に影響を与えるケースが見られるようになりました。屋根からの雪庇(せっぴ)や巨大なツララが真下を通る通行者を脅かすケースも見られます。また、この地域は冬期間のスキー客を大切にするため、これまでは騒音や振動を伴う工事は冬期間自粛するという暗黙のローカルルールが維持されてきましたが、そのルールを破る事例も発生しました。さらに、斜面に発展した街並みから羊蹄山のダイナミックな眺望が得られることも多くのスキーヤーをひきつけてきましたが、中高層建築の計画も次々と明るみになって、これまでこの地を形成してきた多くの事業者や住民は、深刻な危機感を抱くようになったのです。実際に建築現場では、騒音や通行の安全性をめぐって、近隣住民と事業者との間でトラブルも発生するようになりました。

国際化の光と影

これらの問題を解決するためには、土地利用などに関する強力な法的規制措置も効果的ですが、法的規制を行う場合は必ず私権の制限を伴いますので、利害関係者の十分なコンセンサスを得ることが重要になってきます。地域住民、地権者等利害関係者と行政が十分に話し合って地域の望ましい将来像を描き、その実現に向けた具体的なローカルルールを作り、地域の価値を高める必要があります。

このような観点から、倶知安町では2006(平成18)年2月、地域の景観と環境を守るため、建物の高さや建蔽(けんぺい)率、容積率などを規制する内容の「景観要綱」を定めました。この要綱の中では、地域の事業者や住民で構成する景観団体との間で「景観協定」を締結し、行政と住民が協働で景観を守っていくことが謳われています。

景観協定を締結する地域はその後少しずつ拡大していますが、それ以上のスピードで、外国人スキー客を対象としたコンドミニアムなどの開発行為が周縁部に拡大し続けています。いまや、観光とリゾートの国際化の波は、倶知安町ヒラフ地区にとどまらず、ニセコ町の東山地区などにも急ピッチで波及しています。このままの状態で効果的な取り組みがなされないと、地域固有の自然景観も農村風景も開発の波に飲み込まれるのではないか、といった不安の声が各地で聞かれるようになってきました。

ひらふ地区の景観形成地区全体図(倶知安町HPより平成19年9月現在) ひらふ地区の景観形成地区全体図(倶知安町HPより平成19年9月現在)

景観要綱と景観協定を進めるひらふ地区

倶知安町では、「倶知安の美しい風景を守り育てる要綱」に基づいて、美しい風景を守り、つくり、育てることによって、美しいまちづくりを推進し、誇りある郷土の建設と、健康で文化的な町民生活の向上に資することを目的として、景観づくりを進めています。この要綱は、景観形成において特に必要と認める地区を「景観形成地区」として指定し、「地区景観形成基準」を定め、その基準に適合しない行為をしようとする者に対し、必要な要請、指導、勧告をすることができるものとなっています。

本町には様々な景観ポイントがありますが、本町の観光拠点ニセコグラン・ヒラフスキー場周辺(国定公園区域を除く)においては、将来にわたり国内外に通ずる観光リゾート地として望ましい街づくりが強く求められています。そこで、スキー場に隣接する各区域に対して、「倶知安の美しい風景を守り育てる要綱」に基づき、景観形成地区を指定したものです。これらは「景観協定」としてその実施が約束されます。(倶知安町ホームページより)

日時: 2007年10月25日 09:21