農業の概要

農業を知ろうとする時、大切なのはその土地の地形と気候です。

羊蹄山麓の農業は、国立公園秀峰・羊蹄山がそびえ立ち、北西には東洋のサンモリッツと謳われたニセコ山系、その周辺には丘陵。清水をたたえる河川の流域には農耕地が広がっています。特に尻別川流域は、後志管内の穀倉地帯として知られ、羊蹄山麓一円のジャガイモは有名です。

そして気候。羊蹄山麓7町村を含む後志地方は、裏日本海型気候に属し、春から夏にかけては温暖で晴天に恵まれる日が多いのですが、冬は北西の季節風を受けて降雪量が多くなります。根雪は11月中旬から4月中旬。特に羊蹄山麓地域では、北海道内で最も降雪が早く、道内屈指の豪雪地帯となっています。

農産物の種類は豊富で、春を告げるアスパラガスに始まり、夏にはメロン、長イモ、ホーレン草、トマト、スイートコーン、秋にジャガイモ、カボチャ、ニンジンなど。季節の移り変わりと共にバリエーション豊かな大地の恵みたちが収穫されます。では、各町村の農作物の特徴を見ていきましょう。

※「食と農」については、Ⅰ-9(P56~)も参照して下さい。

倶知安の農産物

平坦な土地にはマチの中心部があり、丘陵地帯に畑が多い倶知安町は、「男爵イモ」の銘柄で知られるジャガイモの産地。町のマスコットにもジャガイモをモチーフにしたイメージキャラクターが使われているほどです。羊蹄山麓の基幹作物でもあるジャガイモの倶知安町での収穫量は2005(平成17)年で42,300t。昼夜の寒暖の差が大きい気象条件と、先人たちの試行錯誤による品種改良と土壌改良によって、甘くてホクホクとしたジャガイモを収穫することができます。また、7月初旬に、ジャガイモの白やピンクの可憐な花が畑一面に咲き誇る姿は、観光客の目をひときわ惹き付けて離しません。ほかの農作物としては、てんさい、小麦、小豆、とうもろこし、水稲、牧草、アスパラガスなどがあります。

ニセコの農産物

北に国定公園ニセコアンヌプリ(1,309m)の山岳に囲まれた、波状傾斜の多い丘陵地帯が特徴のニセコ町。町の中央には過去10年間に7回も清流日本一に選ばれた尻別川が流れ、この尻別川に、昆布川、ニセコアンベツ川、真狩川などの中小の河川が合流しています。そんな水に恵まれた大地でありながら、大小の沢が入り組んでいるため、比較的平坦な倶知安や蘭越などに比べて水田耕作を進めるためには大変な苦労があったという歴史を持っています。

こうした歴史と地理的条件から、畑作が盛んで、約200戸の農家が2,000haの田畑を営み、30億円弱を生産。主要作物は倶知安町と同じくジャガイモ。ほかに水稲、メロン、アスパラガス、トマト、ユリ根などがあります。特にジャガイモ、メロン、アスパラガスは質・味共によいことで知られています。

じゃが太くん

ジャガイモがスキーを履いた姿が愛らしい倶知安町のイメージキャラクター。三角形のスキー帽は、正ちゃん帽で、羊蹄山をイメージしたもの。倶知安駅前公園の水飲み場のデザイン、特産品のパッケージなど、町のあちらこちらでその姿を見かけることができます。起用は1991(平成3)年8月3日。以来、町民はもちろん、観光客たちにも愛されています。

蘭越の農産物

周囲を山岳に囲まれた盆地に平坦な地形が広がる蘭越町は、年間雨量約1,182mmで、5~9月の夏期は平均気温16.5℃と稲作に適した気象条件に恵まれたマチです。蘭越町で収穫される米は、米品質評価基準最高ランキングである特Aランク評価。おいしい道産米を生産する道内屈指の米どころとして全国的にも知られています。生産された米は「らんこし米」としてブランド価値が高く、この米を使った地酒「蘭越」は、町の特産品。畑作では、アスパラガス、メロン、イチゴ、ジャガイモなどを生産。恵まれた環境を生かした農業経営によって、北海道の食料基地としての役割を担っています。

真狩の農産物

羊蹄山の南の裾に広がる高原に、農村地帯を形成する真狩は、羊蹄山がもたらす清水に恵まれた、のどかな村です。畑作物や野菜の種類は豊富で、中でも、1966(昭和41)年から本格的な生産が始まったユリ根は、日本一の生産量。高級料理の業務用や加工用として、関西方面を中心に出荷されています。

ほかに、真狩村開拓100年余の中で澱粉加工用として生産されたジャガイモは、現在は食用中心。生産されるジャガイモの大部分を占める「男爵」は“ようていブランド”として全国に出荷されています。「キタアカリ」「アンデス」といった品種も高い人気を集めています。また、近年では、生産者の創意工夫による低農薬や有機栽培の独自ブランドも生まれています。

ジャガイモと馬鈴薯

「ジャガイモ」という呼び名は、日本に渡ってきた当時のジャカルタが“ジャガタラ”と呼ばれて、「ジャガラタイモ」と呼ばれたのが変化したもの。「馬鈴薯」も「ジャガイモ」を示す言葉ですが、こちらは中国での呼び名のひとつと漢字が同じで、日本に伝わった由来は諸説あるのだとか。ジャガイモの形が馬につけている鈴に似ていることから名前が付いたという説もあります。国内では「南京イモ」と呼ぶ地域もありますが、北海道では「ごしょいも」と呼ぶ人もいます。

留寿都の農産物

村の北側に羊蹄山がそびえる留寿都村は、山間に緩やかな丘陵が広がるマチ。1938(昭和13)年に優良品種と認められたでん粉の原料「紅丸イモ」発祥の地として知られています。現在はジャガイモの中でも「男爵」「キタアカリ」などを主に生産。かつて全国一の生産量を誇ったアスパラガス、全道一の生産量となった大根は、早朝収穫を徹底。品質、鮮度共に自慢の商品を出荷しています。

また、粒子が細かく粘り気が強い上、甘味があると評判の長イモは、昼夜の寒暖差が大きい気候条件から生まれる特産品。高い評価を受けています。

冷涼な気候を利用して、南米アンデス原産のヤーコンも栽培。見た目はサツマイモのようですが、シャキシャキとした食感はナシのよう。食物繊維とオリゴ糖を豊富に含んでいるため、ヘルシー志向の人たちを中心に人気を集めています。

喜茂別の農産物

羊蹄山や尻別岳などの山に囲まれ、尻別川や喜茂別川など、大小41の川が町内を流れる喜茂別は水との深い関わりの中で生活が営まれてきたマチ。年間降水量が多く、豊かな水量と水質に恵まれていることから、環境庁より「水の郷」の認定を受けています。

そんな水の郷で最も有名な農作物がアスパラガス。紀元前の古代ギリシャ・ローマ時代から南ヨーロッパで栽培されていたものを、明治時代に開拓使が日本に持ち込み、1929(昭和4)年、アスパラガスに適した細かい黒ぼく土が多い比羅岡地区で栽培を開始。雪が深く、地中が凍結しないことがホワイトアスパラガスの栽培好適地ということもあって、喜茂別町は日本におけるアスパラガス発祥の地となりました。主な農作物は、アスパラガス、ジャガイモ、てん菜など。近年ではメロンやトマトといった高収益作物の栽培も盛んで、市場から高い評価を受けています。また、安全で良質な農作物を生産するために、畜産農家と連携した土づくりにも力をいれています。羊蹄山麓の町村で、唯一大消費地札幌に隣接するマチでもあります。

京極の農産物

羊蹄山麓の北東に広がる京極町は標高が高く、昼夜の寒暖差が大きい上、排水性のよい火山性土壌が広がる土地。こうした条件下では、デンプン質の多い、ホクホクとしたおいしいジャガイモが育つため、味・質共に優れたジャガイモを出荷することができます。

ジャガイモと並ぶ特産品・ニンジンは、鮮度を保ったまま出荷するシステムを1998(平成10)年に確立。同年、ニンジンの選果施設を建設し、「京極ふきだし湧水」を使って洗うことでニンジンを芯から冷やし、温度管理を徹底。市場評価を上げることに成功しました。現在では、道内で富良野に次ぐ、ニンジンの産地に成長しています。

また、いち早くコンピュータによる生産履歴システムを導入。農地地図のデータベース化などを進め、より安全性の高い良質の作物の出荷に積極的に取り組んでいます。ジャガイモ、ニンジン、タマネギの3品目では、北海道クリーン農業推進協議会の「YES!clean」の認証を獲得し、環境に配慮した農産物づくりに取り組んでいます。

北海道クリーン農業推進協議会/ YES!clean

農薬や化学肥料の使用を削減し、生産することを目的に、道立農業試験場などによって開発・改良された「クリーン農業技術」を導入し、よりクリーンな農業を推進する組織。

(1)道内で生産されていること(2)別に定める登録基準に適合していること(3)生産集団の定める栽培基準に基づいて生産されていること(4)他の農産物と分別収穫・保管・出荷されていること

以上のすべての条件に適合し、管理体制が整備されているなどの登録生産集団の要件をすべて満たしていることを条件に認定されます。認定されると、北のクリーン農産物表示制度(YES!clean農産物表示制度)に基づく、YES!clean登録マークを使用して、クリーン農業によって作られた農産物であることを表示することができます。

日時: 2007年10月25日 11:00